今時の撮影機材と今時の撮影技術

映像制作に30年も関わっていると、まさに映像機材と技術は日進月歩で、
正直、私の歳になると新しい事を取り入れることがしんどく感じる。
アナログ時代にはアナログの良さが、デジタル時代にはデジタルの良さがある。
はい以上、おしまいと。言いたいところだが、挑戦してみよう。
特に機材が進化しても変わらない基礎的な技術を身につける事は大切である。
ただ、ここは気ままなブログだ。解説やチュートリアルなどは無いのでご了承を。


ブログ#004 デジタルサイネージと色温度

デジタルサイネージに限らず、映像の「色」には「温度」がある。簡単に言うと「白」には「赤い白」と「青い白」がある。いわゆるホワイトバランスだ。複数台のカメラで撮影する時にはこのホワイトバランスを取っておかなければ編集で色味が合わなくなり大変な事になる。なのでVE(ビデオエンジニア)さんは、しっかりと時間を取って正確なグレースケールと波形モニターを使って色調整をする。今時の編集ソフトは優秀でゴマカシがきくが本来は重要な撮影セオリーなのだ。しかしENGなどの取材現場ではグレースケールを使わずに適当なコピー用紙などでホワイトを取るカメラマンも多くいる。こだわりが無いのでは無く、言ってしまえば見るディスプレイによって再現される色は正確ではない事がほとんどである。数十万円もするスタジオのマスターモニターぐらいにならないと正確な再現は出来ないであろう。もっと言ってしまえば、映像を見る人間の目にも色温度があり、しかも左右で温度が違う。さらに男女でも違う。女性は男性の3倍もの「赤」を見分けることができるのだ。コスメショップで何十本も並んでいるルージュでお気に入りの1本を探すのであるから納得がいく。極論から言うと作られた映像の色は、見る人や、デジタルサイネージのディスプレイによって全部違って見えていることになる。だからこそ撮影時には正確なホワイトバランスを取って作品に望むことが大切だと私は思う。#001で書いたブランド「C」で化粧品の仕事を10年続けられたのは、私が「赤」を見分けられる目を持っているからだと「C」の担当者がお世辞を言っていた。もしそれが本当であればそんな目を持つ人間として産んでくれた母に感謝するしかない。しかし今は老眼と白内障で色も形も不正確極まりない人生の曲がり角に立っている。いや立っているのはしんどいので座っている。

November the 1st, 2019 Toyosaki’s blog


ブログ#005 デジタルサイネージとグレースケール

デジタルサイネージの撮影現場でホワイトバランスを取る「道具」がグレースケールであることは前回お話ししたが、これがなんでこんなに高価なのか?日本であれば「村上色彩技術研究所」のグレースケールが最も有名で信頼できる。黒から白までのグレートーンを手塗りで仕上げる技術は村上色彩技術研究所にしか作れないとみんな思っている。「こんなものPhotoshopで作って高級印画紙にプリントすればいいんじゃないの?」と思ってはいけない。正確な波形モニターで見れば偽物だとすぐにバレてしまう。私はデジタルサイネージのコンテンツ制作以外でも中継の仕事もやっていたので今までに何百人というカメラマンが映したグレースケールを見てきただろうか?もちろん私はVEでないので波形モニターとにらめっこするわけではないし、スタッフが本番前に気持ちをセットアップするひとつの儀式のような意味合いが多かったように思う。こんな中とあるスタジオ収録に顔を出すと、久しぶりに大先輩カメラマンがスタッフィングされていた。そして、そのカメラマンが映したグレースレールに度肝を抜かれたのだ。なんと美しいグレースケールなのか?な私は率直に「こんな美しいグレースケールは今までに見たことが無い」と先輩に話した。その先輩は静かに笑っていただけであった。隣にいた、これも大先輩の編集マンさんが私に「おっディレクターさん、そんな気遣いも言えるようになったか?成長したな」と茶化したのであった。私は本番スタッフではなかったのでスタジオを後にしたが、しばらくあの美しいグレースケールが頭から離れなかった。それからしばらくしてそのカメラマンは病に冒され他界した。偉大なる大先輩カメラマンが私に残してくれたラストカットは、世界で一番美しいグレースケールであった。

November the 8th, 2019 Toyosaki’s blog